デマンドメディアなどのコンテンツファームのビジネスモデルの画期的なところ

 
■コンテンツファームというビジネスモデル

先日赤字にもかかわらず上場して、時価総額17億ドルに達して
ニューヨークタイズ(時価総額14億ドル強)を抜いたデマンドメディア(Demand Media)という会社をご存じですか?

この会社の事業を簡単に説明すると、
とにかく大量の原稿を公開して、集めたアクセスで広告収益を得るというビジネスです。


詳細は以下のようになります。

まず、以下の情報からユーザーが求めているコンテンツを推測してテーマを半自動で決めます。

1.検索の履歴(100以上の情報源から20億程度のクエリを解析)
2.広告出稿状況
3.検索エンジンでの競争の状況

次に、テーマに基づいてSOHOのライター13,000人がコンテンツを大量に生成して公開します。

コンテンツへ主に検索エンジン経由(40%程度)でアクセスを集めて広告収益(Googleアドセンスなど)を得ます。



具体的にはhow to 系のサイトや、

ゴルフに特化したサイト
など、複数に分けて運営しています。

毎日5,000以上の記事を追加しているようです。
現在記事と動画あわせて合計で3000万以上あり、月間のトラフィックは1億を超えているそうです。



他のサイトであまり情報提供していない分野・キーワードをたくさん見つけて、
そこに情報をあてていくという考え方でコンテンツを作っています。
なぜそうするかというと、それによって検索エンジンで上位に表示される可能性が高まるからです。
ちなみに記事を執筆、編集しているフリーランスの報酬体系は以下のようになっているそうです。

新しい記事の執筆 1記事あたり15ドル
既存記事の編集 1記事あたり2.5ドル
記事の事実確認 1記事あたり1ドル
動画作成 1動画あたり20ドル
動画の質の確認と承認作業 1動画あたり25?50セント
書き起こし 1動画あたり1?2ドル
タイトルの校正 1つあたり8セント


■このビジネスモデルのどこがすごいか

このモデルのすごい点は、安いコストで記事をたくさんアップし、検索エンジンで
大量のキーワードでヒットさせることで面を取ってアクセスを集めることにもありますが、
より重要な点があります。

それはコンテンツを科学的な分析の対象として、
需要予測と記事単位での収益管理をできるようにした点です。

コンビニなどの小売が行っている需要予測と陳列商品の取捨選択に似た流れを
メディアに持ち込んだという点が革新的なところです。予測をもとに需要が高い分野の記事をたくさん作り、サイト内部の導線も増やすという作業をすることで、1記事あたりの生産性が高まっていきます。これは推測ですが、リアルタイムで成果に応じた記事の重みづけをして、内部リンク構造を変更することができるようになっていると思います。


どれくらいアクセスが集まりそうかを推測して、
それを元にどれくらいまでコストを使って記事をアップするかを決め、
さらにアップしたあとに実際にどれくらいのアクセスと収益につながったか
をすべて経験として蓄積していけます。
データを元にさらに同じテーマや周辺のテーマで記事を追加することができます。

さらにはコンテンツの配信先を増やしていくことで、
ユーザーがどのコンテンツを読んだかを記録していくことで、
広告もより効率的に配信することができます。
cookieなどでデータを集めて利用者の属性に応じて広告を表示することができるようになります。

記事を5年償却にしているのにまだ利益出てないのは大丈夫なのかというそもそものビジネスモデルについての疑問はありますが、需要予測の精度が高まっていくので近いうちに利益出せると思います。


■問題点と指摘されているところについて
デマンドメディアはコンテンツミルやコンテンツファームというビジネスに分類されているのですが、
このビジネスは総じて検索エンジンを質の悪いコンテンツで汚染しているとして批判をされていることが多いです。
たしかにehowでは、固有名詞の部分をそのまま入れ替えて複製しているだけなんじゃないかという記事も散見されます。
実際に検索結果に読む価値のないコンテンツが表示されて邪魔に思うこともあります。

なぜデマンドメディアがこのような質の低いコンテンツを提供しているかを考えてみると、現状はそのほうが検索エンジンから効率よくトラフィックを集めることができるためです。記事が役に立つかどうかは読み手によって変わりますし、読み手がわずかにでもいると予測して記事を生成しているわけなのでこれはGoogle側の問題のような気がしています。

質の低いコンテンツをGoogleが正確にはじけるようになれば、それにあわせてコンテンツファームを運営している会社も記事の内容を変えて対応できるわけなので、アルゴリズムが変わって順位が下がるとビジネスとして成立しないかというとそんなことはないと思います。



■競争相手について
競争相手は以下のようなサイトがあります。

associated contents http://associatedcontent.com/

wikihow(日本対応してました) http://ja.wikihow.com/
ハウコレ http://howcollect.jp/


広くとらえると以下の会社も競争相手だと思います。

AOL(seed.com という類似サイト持ってますが、それ以外のブログなども競合にあたると思います。)
Yahoo知恵袋
OKwave



■今後の展開について

以下のような動きがおこると想像しています。

特定の分野に特化した類似サイトが乱立。
お店の名前をはじめとした場所や商品など固有名詞に紐づいた記事を同じような手法で大量に集めるサイトができはじめる。
動画や音声などへの対応。
facebookやTwitterなどとの紐づけがされて執筆者がわかる記事を蓄積するように。

コンテンツ提供からデータ提供にシフト
DSP(demand side platform)などの広告テクノロジーとの連動



今回は以下の記事を参考にしました。あわせてどうぞ

Demand Media Plans $120 Million IPO, First Venture-Backed Offering in 2011

The Answer Factory: Demand Media and the Fast, Disposable, and Profitable as Hell Media Model

世界最強のコンテンツミル企業ディマンドメディアの秘密


前から調べていて関連記事を以下にまとめていますので、もし興味がある方はぜひ。

ご意見感想などはブログへのコメントか http://twitter.com/tomohiko11 までお願いします。


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このページは、ソーシャルメディアマーケティング.jpが2011年2月16日 23:00に書いたブログ記事です。

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