なぜ頭の良い人の「完璧な商品」は売れないのか?人の心を“本能”でハックする5つのマーケティング原則

目次

はじめに

「うちの商品の方が絶対に高機能なのに、なぜか売れない…」
「ロジカルに魅力を説明しても、お客様の心に響いている気がしない…」

もしあなたがそう感じているなら、
それは顧客の

「頭」

にばかり話しかけているからかもしれません。

考えてみてください。


現代において、時間がめちゃくちゃに狂う
腕時計はほとんどありませんよね。


かつては「時間の正確さ」が最大の価値でしたが、
今ではそれが「当たり前」。



品質が良いだけでは、もはや誰も振り向いてくれないのです。

では、人々は何を基準にモノを選び、購入を決意するのでしょうか?

その答えは、太古の昔から変わらない、
私たちの心の奥底に眠る

**「本能」**

にあります。


この記事では、
数々のマーケティングテクニックの根源となっている


「顧客の本能」


を、具体的なシーンを交えながら解き明かしていきます。

第1章:お客様は「感情」で買い、「理屈」で言い訳する

マーケティングの絶対原則。
それは

「人は感情で決断し、理屈でそれを正当化する生き物である」

ということです。

すり替えられた写真の謎

①:すり替えられた写真の謎
ある実験で、被験者に2枚の写真を見せ、
どちらかを選んでもらいます。

そして、手品のようにこっそり選ばなかった方の写真とすり替え、
「なぜこちらを選んだのですか?」と尋ねます。


すると驚くべきことに、
ほとんどの人がすり替えに気づかず、
今まさに目の前にある(自分が選んでいないはずの)写真の魅力を、
もっともらしい理由をつけて語り始めるのです。

これは、私たちの購入動機がいかに「後付け」であるかを示しています。


「この機能が便利だから」「コスパが良いから」という理由は、
すでに

「なんとなく、こっちが好き」


と感情で下した結論を、
自分自身に納得させるための言い訳に過ぎないのです。


サプリメント販売

②:「機能」より「快楽」を語れ
あなたが男性向けのサプリメントを売っているとします。

  • 響かないトーク:
    「この製品にはアルギニンがXXmg配合されており、
    血流改善効果が論文で証明されています。
    だから買った方がいいですよ」


  • 響くトーク:
    「これを使えば、奥さんを夜な夜な
    ヒーヒー言わせられますよ」

「そんな下品な話に反応するわけないだろう」と思いますか?


いいえ、します。


なぜなら、人間の脳は
生存と生殖に関する本能に抗えないからです。

「モテたい」
「パートナーを喜ばせたい」
という欲求は、成分表の数字よりもはるかに強力です。

これは巧妙な形でも応用されています。


ある有名なCMでは、
娘と父親がまるでデートのように
仲睦まじく過ごすシーンを描きました。

お父さん臭い



これは「いつか娘に『お父さん、臭い』と嫌われたらどうしよう」
という父親の根源的な恐怖(本能)を巧みに刺激し、


だから、この消臭剤が必要ですよね?


と無意識に訴えかけているのです。

第2章:お客様は「衝動」に支配されている

第二の原則は、

「人は“今すぐ”手に入る快楽を、
“未来”の大きな利益より優先する」

ということです。

①:「3ヶ月後の理想のカラダ」は売れない


「この食事法とトレーニングを3ヶ月続ければ、
必ず理想の体型になれますよ!」


これは100%正しい正論です。


しかし、この正論だけでは商品は売れません。

なぜなら、


顧客は3ヶ月も待てないからです。


彼らが求めているのは

「今すぐ、この苦しみから解放されたい」
「今すぐ、変化を実感したい」


という衝動的な欲求なのです。


②:専門家と素人が見る「ファンタジー」の違い

あなたがビジネスの専門家なら、
「3ヶ月で3000万円稼いだ」

という広告を見ても、
「どうせ元々のリストがあったり、特殊な要因が重なったんだろう」

と冷静に分析できます。

しかし、
これが全く知らない「釣り」の世界だったらどうでしょう?



「このルアーを使えば、初心者でも一投目から爆釣!」

と書かれていたら、

「本当か? もしかしたら自分にもできるかも…」

と、

あり得ないと分かりつつも
淡い幻想(ファンタジー)を抱いてしまう

のではないでしょうか。

お客様は、
あなたが扱う商品の分野においては「素人」です。



だからこそ、専門家のあなたから見れば
非現実的なファンタジーを信じています。




その気持ちを理解し、
まずはそこから引き込んであげることが重要なのです。

アレルギー予防のサプリを売るなら、
「将来のアレルギーを予防できます」という未来の話だけでなく、


「これを飲んでいれば、お子さんの食事のたびに
『これは大丈夫かな?』とビクビクしなくて済みますよ」と、


“今すぐ手に入る心の安らぎ”


を語ってあげる必要があります。

第3章:お客様は「混乱」を死ぬほど嫌う

第三の原則は、


「人の脳はシンプルさを好み、複雑な情報を拒絶する」


ということです。


伝えたいことが多すぎるのは、
何も伝わらないのと同じです。


①:メリットの弾丸シャワーは逆効果
あなたが育毛剤を売っているとします。
その魅力を伝えようと、ついやってしまいがちなのが


「メリットの羅列」


です。


(やってはいけない例)
「この育毛剤を使えば、髪の毛がフサフサになるのはもちろん、男性ホルモンが活性化して夜の生活も充実し、筋トレ効果もアップし、血流が改善して心臓病を予防し、視力も回復し、頭もクリアになって仕事の効率も上がり、結果的に収入もアップして……」

…もう、途中から何が何だか分からなくなりますよね。


これは親切どころか、


顧客の脳をフリーズさせる最悪の伝え方です。

(正解の伝え方)
人間の脳が一度に処理できるのは、
せいぜい3つまで。本当に響かせたいなら、
顧客の本能に最も突き刺さるポイントを3つだけ選び抜くのです。

この育毛剤で手に入るのは3つだけです。



①自信が持てるフサフサの髪

②筋力がつくたくましい体

③奥さんから尊敬される夜の強さ

3つのメリット

どうでしょう?

はるかに分かりやすく、イメージが湧きませんか?


AIは重要な順に並べるのが苦手で、

あらゆるメリットを平等に羅列してしまいがちです。


何を残し、何を捨てるか。


この取捨選択こそが、マーケターの腕の見せ所なのです。

第4章:お客様は「リスク」を全力で回避する

第四の原則は、


「人は利益を得ることよりも、損をしないことをはるかに重視する」
(プロスペクト理論
損失回避)

ということです。


①:返金保証は「魔法の言葉」


お客様が購入ボタンを押す直前、
その頭の中では

「もし失敗したらどうしよう」

「自分には合わなかったらお金が無駄になる…」

という不安が渦巻いています。

この最後の壁を壊す
最も強力な武器が


**「返金保証」**


です。

これは単なる制度ではありません。

「万が一、あなたが満足できなかった場合、
すべてのリスクは私たちが引き受けます。
あなたに失うものは何もありません」


という、売り手から顧客への力強い宣言なのです。

実際には返金率はそれほど高くなくても、
この一言があるだけで購入への心理的ハードルは劇的に下がります。


お客様が感じるであろう不安をすべて先回りして取り除いてあげること。

それが信頼を生み、最終的な決断を後押しするのです。

第5章:お客様は「社会的証明」を求める

そして最後の5つ目の原則。

それは

「人は“みんな”が選んでいるものを正しいと思い込む」

という本能です。

これを「社会的証明」と呼びます。

①:行列のできるラーメン屋の魔力
あなたの目の前に、2軒のラーメン屋があります。

行列店との比較
  • A店:行列ができていて、とても賑わっている。
  • B店:お客さんが一人もいなくて、閑散としている。

あなたはどちらに入りますか?


ほとんどの人が、無意識にA店を選んでしまうはずです。

「あれだけ並んでいるのだから、きっと美味しいに違いない」

と感じるからです。

これは、

他人の行動を「正しい判断のショートカット」として利用する

私たちの生存本能なのです。

②:オンラインショッピングでの応用
この本能は、現代のマーケティングの至る所で使われています。

  • お客様の声・レビュー:

    「★★★★☆ 4.5点」

    「この商品のおかげで長年の悩みが解決しました!」

    という口コミは、デジタル時代の「行列」そのものです。

  • 販売実績・ランキング:

    「シリーズ累計100万本突破!」

    「楽天ランキング1位獲得!」

    というキャッチコピーは、

    「100万人が選んだのだから間違いない」
    「ランキング1位なのだから一番良い商品だ」

    という強力な安心感を与えます。
  • 権威や有名人の推薦:

    「〇〇大学教授も推薦!」

    「人気モデルの△△さんも愛用中!」

    というお墨付きは、「専門家や憧れの人が言うなら間違いない」

    と思わせる効果があります。

自分でゼロから判断するのは大変で、失敗するリスクも伴います。

だからこそ、私たちは「みんな」という名の安心感を無意識に求めてしまうのです。

まとめ:AI時代にこそ「人間の黒い欲望」を探求せよ

AIは、論理的なデータ分析や

「時間を節約できる」「コストが下がる」

といった合理的なメリットを提示するのは得意です。

しかし、AIにはまだ理解できない領域があります。

それが、

理屈では説明できない、
人間のドロドロとした本能や深層心理


です。

  • セミナーに申し込むのは、「仕事が途切れたらどうしよう」という恐怖からかもしれない。
  • 高級ブランド品を買うのは、「あのママ友を見返してやりたい」という嫉妬や見栄からかもしれない。
  • プロレスラーや韓流アイドルに熱狂するのは、説明不能なパッション(情熱)そのものです。

このような、
綺麗事ではない

黒い欲望わけのわからない熱狂

こそが、

人を動かす最も強力なエネルギーです。

これからのマーケティングで求められるのは、
お客様の日常に深く入り込み、
彼らが抱える矛盾やファンタジー、
そして心の奥底にある欲望を理解しようと努めることです。


それこそが、AIには真似できない、
人間の心に深く突き刺さるコミュニケーションを
実現する唯一の方法なのです。

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この記事を書いた人

大手広告代理店で年間数億円規模の広告を運用後、独立。広告戦略設計から運用改善、EC立ち上げ、SEO、写真・クリエイティブ制作まで一気通貫で支援。BtoB/BtoC問わず「広告 × ストーリー」で成果とファンづくりを実現します。

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