結論

紹介を増やしたいなら、最初にやるのは「募集」ではなく「人を見つけること」です。

お金を払って広めてもらうより先に、お金をもらわなくても薦めてくれる人が誰かを特定する。順番は、これだけなんです。

たとえば、こんな人がいませんか。

  • 来るたびに「友だちにも教えたい」と言ってくれる常連
  • 何も頼んでいないのに、SNSに写真を上げてくれた人
  • 「知人に薦めておきました」と、あとから教えてくれた人

心当たりの顔が浮かんだなら、その人が出発点です。浮かばなくても大丈夫。次の章の質問1つで見つけられます。

もう1つだけ、先に知っておいてほしいことがあります。こちらから「紹介してください」と頼んだ時点で、その投稿は広告の扱いになります。(=投稿に「PR」などの表示が必要)。頼まずに書かれたものは対象外です。この線引きは、記事の後半でくわしくお話しします。

紹介集客は「お願いする」より先に「すでに薦めたい人を見つける」から始めます

紹介してくれる人は3種類ある

「紹介してくれる人」とひとまとめにすると、打ち手を間違えてしまいます。動く理由が違うからです。

中小企業がまず狙うのは、報酬で動かない既存顧客のアンバサダーです
種類動く理由向いている使い方
アンバサダー商品が良いから、人に喜んでほしいから報酬なしの継続的な紹介。数は少ないが熱量と信頼が高い
インフルエンサー報酬+自分の好みや世界観に合うか短期の認知拡大。案件は本人が選ぶ
アフィリエイター報酬(成果に対する対価)成果報酬での獲得。継続性は条件次第

影響力の大きいアフィリエイターをインフルエンサーと呼ぶこともあって、この2つの境界はあいまいです。一方で、アンバサダーは「報酬で動かない」という点ではっきり違います。この記事では、アンバサダーを扱います。

インフルエンサーを起用して認知を広げるなら、商品を広める5つのステップも参考になります。紹介してもらう前に、商品の選ばれる理由と、読者が詳しく見られるページをそろえておくと、紹介が無駄になりません。

推奨者を見つける質問

薦めてくれる人は、「見つけてもらった」と感じたときに動きます。 なので、最初にやるのは募集ではなく特定です。

やることは、買ってくれた人・来てくれた人に、この1問を聞いてみるだけです。

この商品(サービス)を、友人や同僚にどのくらい薦めたいと思いますか?

答えてもらうのは、0から10までの数字ひとつだけです。

LINE・メール・会計時の紙、どれでもかまいません。答えやすさが回収率を決めるので、質問は増やさないほうがうまくいきます。

  • 0 = まったく薦めない
  • 10 = 非常に薦めたい

ちなみに、この聞き方には名前があります。NPS(ネット・プロモーター・スコア)です。

「0〜10で聞く」「9〜10の人を推奨者と呼ぶ」という区分は、提唱元の定義と初出の論文に沿っています。自己流で目盛りを変えると、ほかと比べられなくなります。

返ってきた点数は、3つに分けて見ていきます。

0〜10の11段階で聞き、9〜10と答えた人だけに紹介を相談します
点数呼び方やること
9〜10推奨者ここだけに紹介を相談する
7〜8中立薦めるほどではない。改善点を聞く
0〜6不満あり中身を聞いて、先に直す

頼む相手は、9〜10の人だけです。

全員に声をかけると、乗り気でない人に負担をかけることになります。断るほうにも気まずさが残って、次に来づらくなってしまいます。

頼んだら「広告」になる

線引きは1つだけです。こちらから頼んだかどうか。

頼んで書いてもらった投稿は、広告として扱われます。なので投稿には「PR」など、広告だと分かる表示が必要です。

責任を問われるのは頼んだ側(自社)で、書いた本人ではありません(消費者庁)。相手を困らせないためにも、こちらから先に伝えておくのが親切です。

自分がどれに当たるか

分かれ目は「お金を払ったか」ではなく「こちらから頼んだか」です
頼んだ?物やお金を渡した?どうなる
いいえいいえ個人の感想。対象外
いいえはい表示を求めるのが安全
はいいいえPR表示が要る
はいはいPR表示が要る

この記事のやり方(薦めたい人を見つけて相談する)は、3行目に当たります。無償でも、声をかけた時点でPR表示が必要です。

依頼するときの実務

推奨者が見つかったら、次の順番で進めてみてください。

強制せず、広告であることの表示だけは明確に伝えます
  1. まず感謝を伝える。紹介の相談より先に、9〜10と答えてくれたことへのお礼を伝える
  2. どこが良かったのかを聞く。相手の言葉を知ることが、そのまま紹介文の材料になる
  3. 紹介を相談する。強制せず、断りやすい形で聞く
  4. 広告表示のしかたを伝える。「PR」「提供」など、投稿を見た人がすぐ分かる位置に書いてもらう
  5. 内容は相手に任せる。文面を指定すると、体験に基づかない表示になり、別の問題が生じる

「特別感」の作り方

アンバサダーが応じてくれるかどうかは、金額ではなく扱われ方で決まることが多いです。便益にならず、しかも相手が「選ばれた」と感じられるものには、次のようなものがあります。

SNSでの紹介とGoogle口コミは、ルールが違うので分けて設計します
  • 名前を挙げて感謝を伝える(本人の許可を取ったうえで)
  • 商品開発や改善に意見を聞き、反映したら結果を報告する
  • 困ったときに直接連絡できる窓口を用意する
  • 紹介してくれた相手のことも大切に扱う

一方で、限定品の提供・割引・先行販売の権利などは便益に当たり得ます。渡すこと自体は問題ありません。ただ、渡すなら投稿に広告表示を求める、という運用にそろえておくほうが迷わずにすみます。

紹介が起きる場所を、1つに決める

依頼まで進んだら、どこで紹介してもらうかを決めましょう。決めずに「よかったら広めてください」と言うと、相手も何をすればいいか分からないんですよね。

場所向いている相手気をつけること
SNSの投稿すでに発信している人便益を渡したなら広告表示が要る
知人への直接の紹介発信はしないが、周囲に薦めてくれる人いちばん多い形。追える仕組みが無いと数えられない
社内・団体内での共有法人の担当者相手の会社の規定を先に確認してもらう
Googleの口コミ来店客全般ここだけルールが別。前の節のとおり、選んで頼むこと自体ができません
人が集まる場(イベント・協賛)地域で名前を知ってほしいとき1件あたりの費用では測らない。判断のしかたはイベント協賛の判断

向き・不向きがあります。同時に複数を頼まないでください

実際にいちばん多いのは2行目で、しかもいちばん取りこぼされやすい形です。 紹介された人が来ても、店側には普通の新規客に見えてしまうからです。

紹介から来た人を、数える

数えられる形にしておくと、続けやすくなります。大がかりな仕組みは要りません。

  1. 「どこで知りましたか」を聞く形を1つ用意する — 予約フォームの選択肢、初回の問診票、会計時の一言。どれか1つで足ります
  2. 紹介者の名前を書ける欄にする — 「知人の紹介」だけだと、誰が紹介してくれたのか分かりません
  3. 紹介してくれた人に、結果を伝える — 「◯◯さんからのご紹介で来ていただきました」。これが次の紹介につながります
  4. 月に何件だったかを数える — 増減ではなく、まず数があるかを見ます

実は、3番目が報酬より効くんです。紹介した側は、その後どうなったかを知りたいものですよね。何も返ってこないと、薦めたことが正しかったのか分からないまま終わってしまいます。

始める前の確認項目

アンバサダー施策の確認
  • 推奨度の質問を0〜10の11段階で用意している
  • 紹介を相談するのは9〜10と答えた人だけに絞っている
  • こちらから依頼する場合は、広告である旨の表示を求めている
  • 投稿の文面や評価をこちらで指定していない
  • 便益(商品・割引・特典)を渡す場合の扱いを決めている
  • Google口コミへの依頼とは、設計を分けている

今日やること

質問を1つ送って、9〜10と答えた人が何人いるかを数えてみましょう。 ここが紹介の母数になります。

全員に送らなくてもかまいません。直近3か月に来た人だけでも十分です。冒頭で顔が浮かんだ人がいるなら、その人に直接聞くところから始めてみてください。