結論
イベントに協賛して手元に残るのは、リストと信用の2つだけです。
- リスト:その場で、こちらから連絡できる相手が増えたか
- 信用:そのイベントに名前が並んだこと自体が、次の話につながるか
出すのは、このどちらかが取れる枠だけと決めておくと、話が来たその場で答えられます。年に2〜3本へ絞って、その1本ずつに準備をかけるほうが、同じ予算から残るものが増えます。
逆に、次のどれかが付いてくるなら検討する価値があります。主催者が壇上で紹介してくれる、机1つでもブースがもらえる、参加者に配る資料に自社の案内を同梱できる。いずれも、その場で相手と話せるか、話しかけてもらえる形になっているものです。
この記事で扱う範囲
協賛する側の判断を中心に書きます。最後に、自分がイベントを開く側として協賛を集めるときの組み立ても入れています。
いくらまで出せるかは、1件あたりの粗利から、残したい利益を引いた額が上限です。広告で1件を取るのにかかっている額と並べて比べます。
選ぶのは「その場で話せる枠」
協賛の案内には、たいてい掲載メニューが並んでいます。判断は、その1つずつを「リストが残るか」「信用が残るか」の2列で見るだけです。
| 枠の内容 | リストが残るか | 信用が残るか |
|---|---|---|
| 主催者が壇上で紹介する | ◯(そのあと話しかけられる) | ◯ |
| ブース(机1つでも) | ◎ | ◯ |
| 参加者への配布物に同梱 | ◯(反応を測れる形にすれば) | △ |
| 登壇枠(セッションを持つ) | ◎ | ◎ |
| ロゴ・社名の掲載のみ | × | △(イベント次第) |
| 会場で動画・CMを流すのみ | × | × |
協賛メニューを2列で見る。◯は条件つきで期待できるという意味
上の4つは、当日その場で相手と話せます。話せる枠を選ぶほど、翌日から自分で連絡できる相手が増えます。下の2つは名前が出る枠なので、イベント自体の価値が高いときに「信用」の側で選びます。
リストは、その場で自分が受け取る
連絡先の集め方は、当日その場で受け取る形にそろえます。理由は制度の側にあります。
個人情報保護委員会は、個人データを第三者に提供するときは原則としてあらかじめ本人の同意を得る必要があると説明しています(法第27条第1項)。主催者が参加者名簿を協賛企業に渡すのは、この第三者提供にあたります。主催者が渡せるのは、申込みの時点で「協賛社に情報を提供します」と本人に示し、同意を得ている場合です。
だから、受け取る導線は自分で用意します。設計はこうなります。
- その場で受け取る形を用意する(名刺、申込用紙、QRコードでの登録)
- 受け取るときに、何に使うかを伝える(「後日、資料をメールでお送りします」)
- その日のうちに送る。記憶が新しいうちに届くと、そのまま次の約束につながります
QRコードから登録してもらう形にするなら、リンク先は自社サイトの申込ページにして、当日限定のURLにしておくと、何人がそこから登録したかを後で数えられます。その場でLINEの友だち追加をしてもらう形も相性がよく、
紹介してもらうなら、広告と分かる形にする
「主催者が壇上で紹介してくれる」は、協賛のいちばん価値がある部分です。ただし2023年10月1日から、ここには守るべき線があります。
消費者庁は、広告であるにもかかわらず広告であることを隠すことを景品表示法違反としています。事業者が第三者に依頼・指示して行わせた表示も、事業者の広告として扱われます。協賛金を払って紹介してもらう形は、まさにこれに当たります。
紹介や投稿の依頼で線をどう引くかは、アンバサダーマーケティングの始め方。イベントの前後で記事や告知を出すなら、
金額は、同じ額を広告に使った場合と並べる
協賛費は、比べる相手を置くと判断できます。同じ金額を広告に使ったら何件取れるかと並べれば、その場で決まります。
計算はこれだけです。
協賛費 ÷ その場で受け取れそうな件数 = 1件あたりの費用
「受け取れそうな件数」は、参加者数から見積もります。100人規模の会で、ブースに立ち寄るのが1割、そのうち連絡先を残すのが半分なら5件です。この見積もりは仮定なので、当日の実績で毎回上書きしてください。
出せる上限は1件あたりの粗利から逆算し、広告側の1件あたりの費用は「使った額 ÷ 取れた件数」で出します。並べたうえで、リストが目的なら1件あたりの安いほうを選びます。信用が目的なら「1件あたりでは測らない」と決めて出します。どちらの目的で出すかを先に決めておくと、翌月に振り返る材料がそろいます。
メニューは、入れ替えを相談できる
提示された協賛メニューは、そのまま受けるか断るかの二択ではありません。同じ金額のまま、枠の中身を入れ替えられないかを聞くと、話が変わることがあります。
- 「ロゴ掲載の枠を、机1つのブースに替えられますか」
- 「会場での動画放映のかわりに、開会時に一言だけ紹介してもらえますか」
- 「配布物への同梱を追加できますか」
主催者にとって、ロゴの掲載は原価がほとんどかかりません。逆にブースは場所を取ります。それでも、机1つなら空きがあることは珍しくありません。聞くのは無料なので、出すと決める前に一度は相談してみてください。
現金以外での協賛も相談できます。会場に必要な機材を貸す、当日の運営を手伝う、自社の顧客に告知する。集客に貢献する形なら、協賛費が下がるか、同じ額でよい枠に替わることがあります。
当日と翌日の担当を決めてから出す
出すと決めたら、同じ日に人まで決めてしまいます。ここまで決まっていると、当日のブースがそのまま商談の場になります。
- 当日、ブースに立つ人(社長が挨拶だけして帰る形にしない)
- 持っていく資料(会社案内ではなく、その場で次の約束が作れるもの。相談の日程を決める、体験の申込みを受ける)
- 翌日、受け取った連絡先に送る人
出したあとの確かめ方も1つだけ決めておきます。翌月に「その協賛から生まれた話」を1行で書き出す。書けた枠は次も出す。この記録が、年に2〜3本を選ぶときの根拠になります。
経理は名目ではなく、実態で決まる
出したあとに効いてくるのがここです。「協賛金」という名目で払っても、税務上は実態で判定されます。
国税庁は、交際費等と広告宣伝費との区分で、不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図した費用は交際費等に含まれず広告宣伝費になる、としています。また交際費等と寄附金との区分では、寄附金や拠出金と称する支出でも、実質が交際費等や広告宣伝費であればそちらで扱う、個々の実態をよく検討して判定する、と書かれています。
分かれ目は見返りがあるかどうかです。掲載・ブース・紹介という宣伝の実態があれば広告宣伝費として整理しやすく、何も受け取らずに出すだけなら、寄附金として扱われる余地が出てきます。取引先の周年行事への祝い金のように、相手が事業に関係のある特定の人であれば、交際費等の側で見ることになります。
やることは1つです。何を受け取るのかを書面に残す。協賛メニューのページ、依頼のメール、当日のプログラム。この3つが残っていれば、後から実態を説明できます。
自分が主催する側になったとき
イベントを開く側で協賛を集めるなら、順番は逆になります。先に協賛を集めてから、告知にお金を使う。集まった分がそのまま広告費と会場費に回るので、身銭を切る額が減ります。
渡せるものは、お金以外にもあります。
- 招待チケットを数枚渡す。協賛社が自分の顧客を連れてくるので、集客も一緒に進みます
- ブースと登壇枠。協賛社にとっていちばん価値があるのはここです
- 人・場所・機材の提供を協賛として扱う。現金でなくても成立します
ここで渡せるのは、ブースと登壇枠、当日の紹介です。参加者の情報を渡す形にするなら、申込フォームで「協賛社への情報提供」に同意を取り、何をどこまで渡すかを先に決めて明記します。
確認項目
協賛の話が来たら、この順で確かめます。枠の値段より先に、何が残るかです。
- リストと信用の2列で見て、どちらかに◯が付いている
- ロゴ掲載や動画放映「だけ」の枠になっていない
- その場で連絡先を受け取る形を用意した(名刺・申込用紙・QRコード)
- 紹介や投稿を頼むなら、協賛社だと分かる形にしてもらう約束をした
- 協賛費 ÷ 見込み件数 を出して、広告の1件あたりと並べた
- 何を受け取るのかが、メニューやメールの文面で残っている
- 年間の協賛枠(本数と金額)を先に決めてある
次にやること
今日やることは1つです。ここ3か月で届いた協賛の話を紙に並べて、リストと信用の2列に○を付けてください。 ○が付いたものが、今年出す候補です。この基準を持っておくと、次に話が来たときにその場で答えられます。
そして、出すと決めた1本には準備をかけます。当日その場で連絡先を受け取る形と、翌日に送る資料。この2つがあるだけで、同じ協賛費から残るものが変わります。声をかけた人数だけ、こちらから連絡できる相手が増えていきます。
イベントで受け取った連絡先を、そのあとどう扱うかまで含めて設計したい場合は、下の窓口からご相談ください。





