結論

形のないサービスが価格で比べられるとき、原因は価格ではなく、説明のしかたにあることが多いです。

「何をしてくれるか」を丁寧に説明するほど、相手の頭の中では同じことをする会社の一覧ができあがってしまうんです。一覧ができれば、次に見るのは値段ですよね。機能で説明した時点で、価格比較の土俵に自分から上がっていることになります。

抜け方は、値下げではありません。売り物の定義をずらすことです。何をするかではなく、それがあると相手の何が変わるかを売り物にしてみましょう。

この記事で扱う範囲

扱うのは、無形サービスの売り物をどう定義し直すかと、定義したあとに何をそろえるかです。コンサルティング・制作・士業・研修・保守・人材など、目に見えないものを売っている事業を想定しています。

士業のように会の広告規程がある業種は、何をどこまで書けるかを先に確かめておくと早く進みます。なお、広告媒体の選び方と運用そのものは扱いません。

この記事は当社(アドキタ)が支援したBottino株式会社の事例を下敷きにしています。そのページの経緯を繰り返すのではなく、同じことを自社でやるための手順に組み直したものです。

この記事に載せている写真は、支援先から掲載の許可を得て当社が撮影・公開しているものです。 素材写真やAI生成の画像は使っていません(AI画像を集客に使う線引き)。

何が起きていたか

同社が提供しているのは、社長の頭の中にあるノウハウを、会社の資産に変える組織デザインです。

このサービスを説明しようとすると、どうしても「マニュアルを作ります」という言い方になりますよね。実際にマニュアルは作るので、嘘ではありません。

ただ、そう言った瞬間に何が起きるのでしょうか。

  • 相手は「マニュアル作成代行」の会社を思い浮かべる
  • 3社ほど並べて、内容と価格を比べる
  • 一番安いところに聞いてみる

本当に売っていたものは、そこには入っていません。 事例ページには、「何をしてくれる会社か」より「なぜ必要か」が伝わっていなかった、と書かれています。

機能で説明すると、なぜ価格に落ちるのか

同じサービスでも、2通りで説明すると相手の受け取り方が変わってきます。

機能で説明する変化で説明する
言い方マニュアルを作ります社長がいなくても回る状態を作ります
相手が比べる相手同じ作業をする会社比べる相手が思いつかない
判断の基準価格・納期・ページ数その状態が要るかどうか
断る理由高い今はそこまで困っていない

同じサービスを、2通りで説明したとき

注目してほしいのは、いちばん下の行です。

機能で説明したときの断り文句は「高い」。変化で説明したときの断り文句は「今はまだ」です。この2つは、まったく違う断られ方なんです。

前者は、あなたの価格が問題だと言われています。一方で後者は、タイミングの問題だと言われているだけ。後者なら、時期が来たときに思い出してもらえます。

売り物を定義し直す

やることは1つです。自分の売り物に「それがあると、相手の何が変わるか」を繰り返し当てて、手段から離れるまで掘り下げていきます。

1行目は手段です。4行目が売り物になります

大事なのは、「何をするか」を「相手の何が変わるか」に置き換えること、この1つだけです。

手順1|今の説明を書き出す

まずは自社サイトのサービス紹介を、そのまま書き出してみてください。名詞と動詞に分けて並べると、機能の一覧になっているかどうかがはっきりします。

手順2|「それで、どうなるのか」を3回聞く

書き出した1行ずつに、「それで、相手はどうなるのか」を3回繰り返してみます。 例えば、こんな感じです。

  1. マニュアルを作る
  2. → 誰でも同じ仕事ができるようになる
  3. → 社長が現場に出なくてよくなる
  4. → 社長が会社を離れられる

4行目が売り物です。 1行目は、そこへ行くための手段にすぎません。

事例では、価値の定義を「マニュアル作成代行」から**「社長の自由と安心感」へ**変えています。3回聞いた先にあるものを、そのまま看板にしたわけですね。

定義し直したあとの紙。売り物が「マニュアル作成」ではなくなっています(写真:[アドキタ 支援事例](https://socialmediamarketing.jp/cases/bottino/))

手順3|言い過ぎていないか確かめる

ここで一度、立ち止まる必要があります。3回聞いた先が、本当に自社の仕事で届くところなのかを確かめておきます。

届かないところまで書くと、契約後にずれが出てしまいます。問い合わせは増えるが、決まらない・続かないという形で表に出てくることが多いです。

手順4|Who / What / How に分解する

定義し直したら、それを3つに分けます。

決めること例
Who誰に向けたものか社員10〜30人で、社長が現場に出ている会社
What何が手に入るか社長が現場を離れられる状態
Howどうやって業務の棚卸しと、引き継ぎの型づくり

訴求を3つに分ける

この3つが分かれていないと、媒体ごとに言うことがずれてしまいます。 広告は短く、LPは長く、提案資料はさらに長くなりますが、Who と What は全部で同じにしておくのが原則です。変わってよいのは、How の詳しさだけです。

そろえるものと、そろえ方

事例では、LP・広告・営業資料のメッセージを統一しています。順番に見ると、こうなります。

言葉をそろえる対象
  • 検索広告の見出しと説明文
  • SNS広告のクリエイティブ
  • LPのファーストビュー
  • サービス紹介ページ
  • 提案資料の1枚目
  • 問い合わせフォームの前後の文言
  • 商談で最初に話す30秒

最後の1つは、特に抜けやすいところです。広告とページは直したのに、商談では今まで通り機能の説明から入る。これだと、来た人は「聞いていた話と違う」と感じてしまいますよね。

LPの中身の作り方はLP改善で最初に見るところ、広告文は長く回っている広告文の作り方。広告のリンク先に何が必要かは、実測した広告のリンク先ページは何でできているかがあります。

直し続ける体制

事例で書かれているもう1つが、定例会で広告の管理画面を見ながら、その場で直すという進め方です。

無形サービスの訴求は、一度決めて終わりにはなりません。言い換えが当たっているかどうかは、出してみないと分からないからなんです。

  1. 定義した Who / What / How を、広告とLPに反映する
  2. 2〜4週間動かす
  3. 定例で管理画面を一緒に見る
  4. 問い合わせの中身を読む(数だけ見ない)
  5. ずれている言葉を直す
  6. 2に戻る

4番が肝心です。 件数だけ見ていると、増えた・減ったしか分かりません。何に反応して問い合わせてきたのかは、フォームの記入内容と商談の最初の一言に出てきます。

数字は、表示回数やクリック数ではなく問い合わせの件数で見ます。そのときは、送信ボタンのクリックではなく、受付が完了した画面を数えるのが正確です。

数字ではなく、質の変化で見る

この事例に載っているのは、問い合わせ件数ではなく問い合わせの温度感が変わったという変化です。価格比較ではなく、サービスの思想に共感した相談が増えた、とされています。

無形サービスでは、こちらのほうが実態に近いことがあります。 件数だけなら広告費を増やせば増えますが、増えたぶんが全部「一番安いところを探しています」だったら、改善とは言えませんよね。

なので、問い合わせの内容を分類して数えるのがおすすめです。価格を聞いてきた件数と、課題を話してきた件数を分けて記録するだけでも、変化は見えてきます。事例の数字の読み方は店舗集客の事例7件を並べて分かったこと。

出す前の確認

定義し直したら、出す前にここを見ておくと安心です。

定義し直したあとで
  • 「それで、どうなるのか」を3回聞いた先を、看板にした
  • その状態まで、実際に自社の仕事で届く
  • Who / What / How が分かれて書いてある
  • 広告・LP・提案資料で、Who と What が同じになっている
  • 商談の最初の30秒も、同じ言葉に直した
  • 問い合わせを、件数だけでなく中身で分類して数える準備をした
  • 効果を断定する言葉(必ず・保証・No.1)を使っていない

自分でやるか、相談するか

売り物を定義し直すところは、外注できません。 3回聞いた先に何があるかは、その仕事をしている人にしか答えられないからです。ここを外に投げると、きれいだけれど中身のない言葉が出てきてしまいます。

外に頼む価値が出るのは、定義したものを媒体に載せる段階です。同じことを言っているつもりでも、広告では字数が足りず、LPでは説明が長すぎる、というずれが起きがちです。ここは慣れの差が出ます。

  • まだ機能で説明している → 3回聞くところから始める(社内でできる)
  • 定義はあるが伝わっていない → 広告・LP・資料を並べて、ずれを探す
  • 問い合わせは来るが決まらない → 看板と提供内容がずれていないか見る

当社の支援事例には、この順番で進めた例が業種別に並んでいます。7件を横断して共通していた打ち手は店舗集客の事例7件を並べて分かったこと、EC商材で同じことをやった例はネットショップが売れない理由は入口商品。